賃金・残業代の未払い 退職金の不支給


概要

賃金、残業代については、従業員は使用者に対し当然支給を要求できます。 また、退職金についても、勤務先に関連規程があれば使用者に対し支給を要求できます。

しかし実際には、経営環境の悪化や職場での力関係などの事情により、本来請求できるはずの賃金、残業代、退職金が未払いになっているケースが往々にしてみられます。

当事務所は、このような未払いの賃金・退職金・残業代の請求に関する案件に積極的に取り組んでおりますので、ぜひご相談ください。

  1. 賃金未払い
  2. 残業代未払い
  3. 退職金の不支給
  4. 未払い賃金・残業代・退職金の回収
  5. 未払い賃金・残業代・退職金と使用者の破産

1.賃金未払い

労働基準法上、賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、直接労働者に対し、通貨で全額支払わなければならないと定められています。
(ただし、源泉徴収や社会保険料の控除など、法律で定められた例外があります。)

したがって、労働者には、毎月決まった賃金が支払われなければなりません。
賃金の未払いがあった場合には、労働者は当然それを請求でき、賃金を支払わない使用者については罰則が科せられています。この場合、労働者としては、裁判等で未払い賃金の請求をすることができるほか、労働基準監督署へ賃金が未払いであることを申告するなどして、行政による指導を求めて賃金未払いを是正させることなどができます。
ただし、賃金請求権は2年で消滅時効にかかり、2年以上前の賃金については請求することができなくなるので注意が必要です。未払い賃金については、ぜひお早めに相談されることをお勧めいたします。

2.残業代未払い

現在非常に重要な問題になっているのが、残業代の未払いです。
労働基準法では、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超えて労働した場合や休日に労働した場合(変形労働時間制がとられている場合には所定労働時間を超え、かつ、法定労働時間を超えて労働した場合)には、割増賃金を支払わなければならないと定められています。残業の場合は25%、休日労働の場合は35%の割り増しとなり、残業が深夜(午後10時~午前5時)に及んだ場合にはさらにそれぞれ25%の割り増しとなります。 ただし、みなし労働時間制がとられている場合や、管理監督者についてはこの限りではありませんが、管理職の方であっても、いわゆる「名ばかり管理職」として、管理監督者ではないとされた場合は、残業代の支払いが認められることがあります。

残業代の算出式は以下のとおりです。

残業代=(所定賃金)÷(月の所定労働時間)×1.25(休日労働の場合は1.35、深夜労働の場合は1.5、休日深夜労働の場合は1.6)×(残業時間数)

残業代についても、賃金と同様、未払いがあれば使用者に罰則が科せられます。
従って、残業代が支払われない場合も、賃金未払いの場合と同様に、裁判等で残業代を請求するほか、労働基準監督署への申告により是正させることができます。労働者がどれだけ残業したのかということが問題となるため、日常から、自分の労働時間及び残業時間を記録しておくことが重要です。
なお、残業代も、2年で消滅時効にかかりますので、ぜひお早めに相談されることをお勧めいたします。

3.退職金の不支給

退職金が支給されるためには、就業規則等において退職金規程が定められていることが必要です。
もっとも、規程がなくとも、従来からの慣行がある場合などには、支給を求めることができる場合があります。また、懲戒解雇の場合などに退職金が不支給とされることもありますが、そのような取扱いは、あらかじめ退職金規程等に明文で定められていなければなりません。
従って、退職金の不支給に関する請求を検討する場合は、勤務先の就業規則や退職金規程についてあらかじめよく調査しておく必要があります。これについては弁護士に対する相談が有益です。使用者に退職金の支払義務があるにもかかわらず退職金の不支給がある場合には、裁判等でその支給を求めることができます。
この場合、時効期間は5年です。ただし、退職金の不支給については、罰則規定はありません。

4.未払い賃金・残業代・退職金の回収

民法は労働者保護の観点から、賃金、残業代、退職金といった労働者が勤務先に請求できる権利を保護しており、取引によって勤め先に生じた権利義務より原則として優先されます(先取特権)。
したがって、通常は、この先取特権に基づいて勤務先の資産から回収できます。順序としては、まず勤務先に請求し、もし支払われない場合は強制執行することになります。具体的な回収の方法につきましてはご相談ください。

5.未払い賃金・残業代・退職金と使用者の破産

賃金、残業代、退職金の未払いなどがあったままで使用者が破産してしまった場合、当該未払い分はどのように取り扱われるのでしょうか。
破産法上、賃金、残業代、退職金などの労働債権のうち、裁判所が破産手続を開始する前の3ヵ月分の給料に相当する金額については、随時支払を受けることができます(財団債権)。また、それ以前の分についても他の一般債権者よりも優先して配当を受けることができます(優先的破産債権)。

なお、優先的破産債権の部分の労働債権について、配当手続を待っていては労働者の生活の維持が困難である場合には、配当手続以前に弁済を受けることもできます。

破産の時点で使用者に財産がなく、未払い賃金等の支払いを受けることが困難な場合、一定の要件の下で、独立行政法人労働者健康福祉機構に対して未払い賃金の立替払いを請求することもできます。立替払いを受けることができる金額は、未払い賃金等の80%(ただし、退職時点の年齢に応じて上限があります)です。請求手続に関する用紙などは、労働基準監督署で交付しています。但し、期限があるので注意して下さい。
勤務先の倒産のうわさや兆候が出た場合は、スムーズに権利を行使し、また行政上の制度を利用できるよう、可能な限り急いで給与明細や労働契約書、出勤簿などの記録を集めておくことが望まれます。

さらに、使用者が破産した後であっても未払い賃金等の請求をあきらめる必要はありません。 いずれにしても、できるだけ多くの未払い賃金・残業代等を回収するためには、早期に弁護士に相談するのが肝心です。