離婚の基礎知識


離婚とは

離婚とは、婚姻関係にある生存中の夫婦が、有効に成立した婚姻を、婚姻後に生じた事情を理由として将来に向かって解消することをいいます。
離婚制度は有効に成立した婚姻を事後的に解消するものである点で、婚姻成立の当初からその成立要件に問題がある婚姻の無効(民法742条)や婚姻の取消し(民法743条)とは区別されます。

離婚の種類と手続

離婚には、大きく分けて以下の4つの種類(方法)があります。

①協議離婚

協議離婚とは、夫婦間で協議により離婚を決定する方法です。協議離婚が成立するには、夫婦ともに離婚する意思があることと、その意思に基づいて離婚届が作成され、これが受理されることが必要です。 協議離婚をする場合、未成年の子供がいる場合にはその子供の親権者を定めなければなりません。これを定めなければ、離婚届は受理されませんのでご注意ください。

協議離婚のメリット・デメリット

協議離婚では、手続が簡単で、離婚届さえ提出すれば時間や費用はかからず離婚が成立します。その反面、慰謝料や養育費、財産分与などの詳細を決めていなくても、「とりあえず」離婚の手続だけが先行してしまうこともあります。

相手の顔も見たくないから「とりあえず離婚」と思って離婚してしまった後、改めて相手に養育費、慰謝料や財産分与などについて交渉を申し入れても、離婚した後であれば、相手が交渉に応じなかったり、前言を翻して交渉が難航するということがよくあります。 協議離婚をする場合には、離婚する前に各種交渉は終わらせておき、その内容を書面に残すようにするとよいと思います。

②調停離婚

離婚について当事者間で話し合いをしてもまとまらない場合や、離婚の話し合い自体ができない場合には、家庭裁判所の調停手続を利用することになります。
この調停手続で離婚が成立した場合を、調停離婚といいます。

調停離婚のメリット・デメリット

家庭裁判所に調停を申し立てると、期日指定がなされ裁判所より呼び出しがあります。裁判所の調停室で、調停委員会と当事者を交えて話し合いながら進行します。

離婚の当事者以外の第三者である調停委員会が関与することで、ある程度は客観的、冷静に話し合いが進み、当事者のどちらかに一方的に不利な条件での離婚を避けることができます。 また、子供の親権や慰謝料、財産分与についても一度に話し合うことができ、離婚にまつわる紛争を一挙に解決することが可能となります。

調停で両当事者が合意した内容は、調停調書に記載され、この調停調書には法的拘束力がありますので、後に慰謝料や養育費、財産分与の不払いなどが起きた場合には、強制執行をかけることが可能となります。 一方で、調停も協議離婚同様、あくまで当事者が合意しない限りは離婚できませんし、親権、慰謝料、財産分与についても同様です。

また、調停委員は第三者的立場でかかわるといっても、あくまで調停の場で話された内容や出された資料がベースになりますので、交渉を有利に進めたりすることや、法律の知識に自信がなく、何を話せばよいのか、何が重要な資料になるのかわからないという場合には、相手のいいように離婚の条件等を決められてしまう可能性もあります。このような場合には、一度弁護士に相談してみるのもよいと思います。

③審判離婚

家庭裁判所における調停が成立しない場合に、審判を申し立てると、家庭裁判所が離婚原因の有無等を判断し、離婚できる場合には職権で離婚を宣言します。 これを審判離婚といいます。審判では、親権、財産分与、慰謝料の決定なども行うことができます。 家庭裁判所の審判離婚によって決定した離婚に対して不服がある場合には、2週間以内に異議を申し立てることができます。

④裁判離婚

協議離婚も調停離婚も成立せず、審判離婚もなされないときに、判決によって離婚することを裁判離婚といいます。

離婚できる場合(離婚原因とは)

協議離婚や調停離婚において、お互い合意のうえで離婚する場合には、離婚理由に制限はありません。 しかし、当事者の一方が離婚に反対していて、離婚できるかどうかを法廷で争う場合には、つまり相手が離婚に反対しているにもかかわらず、離婚するためには、民法所定の離婚原因が必要になります。

【民法所定の離婚原因】(民法770条1項)

  • 配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)
  • その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき(5号)

①不貞な行為

判例(最高裁判所の判決による判断)は、不貞な行為について「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義しています。 また、判例において、今まで一度の性的関係のみで離婚を認めた例はありません。 したがって、不貞行為とは、配偶者以外の者との「継続的な」「性的関係」のことを指すと考えてよいと思います。

②悪意の遺棄

夫婦の義務として、民法は「夫婦は同居し、お互いに協力、扶助し合わなければならない」と定めています。 この同居、相互協力、相互扶助の義務に正当な理由無く反することを「悪意の遺棄」といいます。 たとえば、同居している家に帰宅することができない特別な理由もないのに家に帰らず、かつ、家庭に生活費をいれないといった場合が、これにあたることになります。

③3年以上の生死不明

生存も死亡も証明することができない場合をいいます。

④回復の見込みのない強度の精神病

⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由

夫婦関係が破綻してしまい、その関係が回復される見込みがないと判断される場合をいいます。 これは、夫婦間の事情を総合的に判断して、裁判所が最終的に判断するものなので、必ずしも定型的に判断できるわけではありません。

よく離婚の原因としてあげられる「性格の不一致」は、これだけで婚姻を継続しがたい重大な事由になることはありませんが、性格の不一致を原因として、実際の夫婦の関係が、これ以上結婚生活を継続できない、もう修復は不可能であるという状態にまで至ってしまった場合には、離婚原因になります。 判例でこの事由に該当するとされたものの一部として以下のようなものがあります。

  • 日常的な暴言・暴行・虐待(DV)
  • ギャンブル、多額の借金、酒乱
  • 定職につかない
  • 暴行をふるって性交渉を強要する
  • 刑務所への服役
  • 長期間の別居
  • うそをついて結婚した
  • 老人性痴呆症
  • 過度の宗教活動
  • 性交拒否
  • 同居の家族との不和や双方の家族との不和