離婚まつわるお金の問題には、大きくわけて慰謝料、財産分与、養育費、婚姻費用の4つがあります。ここでは、これらについて解説します。
慰謝料
慰謝料とは、離婚の相手方の不法行為により受けた損害(精神的苦痛や虐待による肉体的苦痛などの損害)を、回復するために支払われる金銭をいいます。
ただし、慰謝料を請求すれば、必ず認められるわけではありません。離婚の原因が、相手方の暴力や不倫であり、それを相手方が認めている場合や、証拠(診断書や不倫の現場を撮影した写真など)が存在する場合は別ですが、そうでない場合(性格の不一致や家庭内の不和、証拠がないなど)には、慰謝料が認められないこともあります。
また、離婚の相手方だけではなく、その不倫相手が結婚していることを知っていながら不倫をしていたような場合には、その不倫相手にも慰謝料請求をすることができます。
財産分与
財産分与とは、夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成した財産を、離婚時に清算、分配する制度です(通常は1/2の割合で分配することになります)。
「夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成」された財産が分与の対象になる点に注意が必要です。
ですので、結婚前から既に所有していた財産(結婚指輪や一人で貯めていた預貯金など)は財産分与の対象には含まれませんし、結婚後においても、相続により一方が取得した不動産などは、財産分与の対象にはなりません。
逆に、「夫婦の協力で、それまでの結婚生活において形成した」と評価できるのであれば、財産の名義は関係ありません。
夫婦で貯蓄していたお金の預金口座が妻名義である場合や、結婚後に購入した不動産の名義が夫名義であっても、それが夫婦の協力で形成された財産と評価できれば、当然財産分与の対象となります。
また、財産分与の対象となるのは、プラスの財産ばかりではありません。夫婦の共同生活の中で生じた借金などの債務も財産分与の対象となります。典型的な場合としては、家族の共同生活のために購入した家の住宅ローンの場合があります。
最近では、新たに年金分割という制度が創設されたので、これにより、将来発生する年金の分割も、一定の場合可能になりました。
養育費
養育費とは、子供を育てるのに必要な費用のことです。 子供にかかる衣食住費、教育費、医療費、最低限の娯楽費などがこれに含まれます。 養育費は親子の身分関係から生ずるものなので、親権に関係なく子供を引き取らない親が別れた子供に支払う義務があります。
算定表について
2003年春、東京と大阪の裁判官らが研究の結果、養育費、婚姻費用の算定基準をまとめました。
この算定表は、現在、東京・大阪の家庭裁判所で参考資料として活用されており、他の家庭裁判所でも徐々に参考にされつつあります。
また、家庭裁判所の調停においても、調停委員の多くは、この算定基準を参考にしています。
ですので、養育費、婚姻費用の請求額を考える場合には、この算定表を基本にして考えていくことになります。
算定表は、子の人数(1人から3人)と年齢(0歳から14歳と14歳から19歳の2区分)に分かれており、養育費と婚姻費用でそれぞれ9個の算定表が作成されています。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るために必要な費用のことをいいます。 ですので、婚姻費用の分担は結婚している間の問題であり、主に別居中の夫婦を念頭においているといえます。
また、婚姻関係が破綻し、離婚訴訟中や調停が進んでいる間であっても、婚姻費用の分担は免れません。 なお、前述したように、現在では婚姻費用の分担額についての算定表が作成され、この算定表が参考資料として広く活用されています。
以上のような離婚にまつわるお金の話は、手続的な問題や、そもそも請求できるのかという点も含めて法律の専門家でないと判断が難しいと思います。 ですので、自分のケースで慰謝料などの財産的給付が認められるのか、認められるとしてその額はいくら位になるのかについて、一度弁護士に相談していただければと思います。