1.はじめに
近年、本業は堅調であるにもかかわらず、突如破綻を余儀なくされる企業が増加しており、その原因が2000年代前半にかけて銀行から中小企業に向けて販売されたデリバティブ商品にあるという報道がなされております。
この為替デリバティブ商品は、長期為替予約といわれ、基本的には、1年を超える期間(3年から10年)、決められた為替レート(例.1ドル=100円)で米ドル等の外貨を購入するという内容のものです。
長期為替予約が盛んに売買された2003年から07年にかけては、米ドル/円の相場は、120円から100円台後半で推移しておりました。しかし、その後急激な円高が進行したため、長期為替予約により多額の損失が発生することとなり、輸入関連企業でありながら、円高の恩恵を受けることが出来ずに法的整理へと追い込まれたケースもあります。 この長期為替予約には、以下のとおり、契約時の契約内容の説明が不十分である場合等問題も散見されており、為替差損金の減免や、銀行に対する損害賠償等が可能となる場合もございます。
2.長期為替予約の問題点
(1)問題点1:必要性に欠ける
長期為替予約を導入した企業は、外国通貨による決済に際して、将来円安になった場合の為替リスクを回避する目的であることが多いと思われます。 しかし、為替リスクを回避するには通貨オプション取引を用いる方法もあり、実際の需要や市場実勢に関係なく取引しなければならない為替予約を用いる敢えて必要性は乏しいと言わざるを得ません。 また、長期為替予約を利用する必要性があるにせよ、そもそも、為替リスクを回避するための商品ですので、為替リスクを負っていない企業は、購入する必要のない商品です。
(2)問題点2:リスクに対する説明が不十分
通常、長期為替予約は、通貨のプットオプション(決められたレートで通貨を売ることのできる権利)と組み合わせられており、オプション料が不要とされる場合が多数です(ゼロコスト・オプション)。しかし、これには、予想に反して通貨の価値が低下した場合に損失が無限定となる等、大きなリスクが存在します。長期為替予約の契約に資金が必要ないことが強調され、こうしたリスクに対する説明が十分になされていない場合は、問題です。
また、長期為替予約には、①為替相場が一定水準に達した場合は取引を終了する一方で、別の水準を維持している場合には取引額を増加する(ノック・アウト、ノック・イン条項)、②契約期間中に解約する場合に多額の違約金が発生するといった条項が含まれていることがあります。長期間にわたる為替相場の変動を一般人が予測することはほぼ不可能であり、長期為替予約は、為替相場が変動した場合にどの程度の利益(損失)が発生するのか一見して分かりにくい複雑な商品です。このような商品を顧客に勧誘する場合、銀行等の売主には、顧客に対し、為替相場が変動した場合に顧客に生じる損失を具体的に分かりやすく説明する義務があります。そうした説明を怠った場合、銀行等に法的責任を追及できる可能性もあります。
3.弊所の対応について
弊所では、長期為替予約により被害を受けられた方のご相談をお受けしております。ご自身が何らかの救済を受けることができるかどうかその他長期為替予約について疑問点がある方は、お気軽に弊所までご連絡ください(電話相談は無料でございます。)。