後遺症逸失利益について


後遺症について

不幸にも後遺症を負ってしまった場合、認められる保険金の内の大部分を、入通院慰謝料・後遺症慰謝料・後遺症逸失利益が占めることとなります。 しかしながら、保険会社が示談の段階で提示する金額は、正当な賠償額よりも遥かに低い金額であることがほとんどです。

例1 14級の後遺症を負った場合 裁判所基準では後遺障害慰謝料としてだけでも110万円の損害賠償が認められる →保険会社から提示される後遺障害慰謝料は100万円を大きく下回ることがほとんど
例2 9級の後遺症を負った場合 裁判所基準では後遺障害慰謝料としてだけでも690万円の損害賠償が認められる →保険会社から提示される後遺障害慰謝料は200~300万円程度であることが多く、正当な額からはほど遠い

同じことは、入通院慰謝料でも言え、保険会社の提示する入通院慰謝料は、正当な金額からはほど遠いと言わざるを得ません。

後遺症逸失利益について

後遺症逸失利益については、
基礎収入額×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数×労働能力喪失率の計算式で算定するのが一般的です。
①基礎収入額、②労働能力喪失期間、③労働能力喪失率の内、特に基礎収入額・労働能力喪失期間については、保険会社の提示が理不尽なものであることが多いです。

①基礎収入額

基礎収入額は、原則として事故前の現実収入を基礎とすると言うのが実務です。
しかしながら、平均賃金程度の収入を得られる立証が被害者側であれば、平均賃金が基礎収入として算定されます。
平均賃金は、例えば30歳大卒男性であれば年530万3100円、40歳大卒男性であれば年776万2200円とされており、基礎収入として平均賃金が採用されただけで基礎収入額が増加する事案は極めて多いです。
大阪高判平成16年12月7日の事案では、事故当時20歳であった被害者の収入は平均日額5903円に過ぎませんでしたが、「平均賃金程度の収入を得ることができる相当程度の蓋然性があったものと認められる」として、男子労働者の全年齢平均賃金である565万9100円が基礎収入として採用されました。

また、東京地判平成16年7月5日の事案では、事故前の実収入は年収にすれば250万0536円に過ぎないと認定しながらも、平均賃金の7割である396万1370円が基礎収入として採用されました。
また、例えば主婦の方が被害者となった場合、保険会社は収入がない(少ない)ことを理由に、低額の基礎収入を提示してくることが多いです。

しかしながら、主婦の方の基礎収入の算定において、最判昭和49年7月19日が、「女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である」と述べており、主婦の方については、全女性労働者の平均賃金である年収348万9000円を基礎収入として後遺症逸失利益を算定するのが原則となります。

②労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は、原則として終期を67歳として算定されます。
しかしながら、保険会社は特に理由もなく、労働能力喪失期間が5年や10年に過ぎないとの提示をして来ます。
一般的に弁護士が入った場合、このような保険会社の主張が認められることは少ないです(ただし、むち打ちを除く)。

③労働能力喪失率

労働能力喪失率については、自賠責の基準が確立されており、保険会社が不当な提示をして来ることは、基礎収入額、労働能力喪失期間と比べると多くはありません。
しかしながら、担当者によっては、特に理由もなく、不当に低い労働能力喪失率を提示してくることもあり、やはり注意が必要です。
なお、労働能力喪失率は、例えば3級以上の後遺障害であれば100%、5級で79%、9級で35%、12級で14%、14級で5%と定められています。