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「ポケモンGO」日本の法律では争うことができない!?


  『「ポケモンGO」利用規約に仕組まれた”ワナ”』(東洋経済オンライン)の記事によると、ナイアンティック社の利用規約に『「抵触法を考慮することなく、カリフォルニア州法に準拠する」とし、日本の法律では争うことができないとされている』『そもそも訴訟になること自体を回避するため、「仲裁合意」という項目が設けられている。』ということを理由に、日本の裁判所で争えないかのように記載されていますが、果たして、そうでしょうか。

 現時点で、実際に訴訟を起こされた人は、さすがに、まだいないと思いますので、結論については、断定できませんが、仮に、私が訴訟を行うとすれば、概ね、以下のような主張を行って、東京地裁に訴訟提起をすることになると思います。

 ナイアンティック社は、「ポケモンGO」の事業を日本において行っているので、日本の裁判所に訴えを提起することができる(民事訴訟法第3条の3,5号)が、日本国内に主たる事務所又は営業所がなく、日本における代表者その他主たる業務担当者がいない(同法第4条5号)ので、民事訴訟法10条の2、民事訴訟規則6条によって、東京都千代田区を管轄する東京地裁に管轄が認められる。

 この後、外国法人に対する送達がなされることになるのですが、送達に際して、英訳が必要となるほか、非常に時間と手間がかかります。この点は、国内企業に対する訴訟の場合とは、相当異なる労力が必要です。

 裁判期日において、おそらく、被告となったナイアンティック社は、次の主張を行うでしょう。

 民事訴訟法第3条の7第1項に基づく管轄の合意がある。

 この主張は認められるでしょうか。

 民事訴訟法第3条の7第5項には、消費者契約に関する合意の効力についての規定があります。これによると、消費者が契約締結時にその外国に住所があったような場合(今回のケースではカリフォルニア州に居住していたような場合)には、一応、管轄が認められますが、そうでない場合には、消費者の側が敢えてカリフォルニアで裁判をしたいと主張しない限りは、管轄の合意についての効力を有しないとされています。そのため、仮に、ナイアンティック社が、合意の効力を主張したとしても、その主張は認められないことになります。

 その結果、ナイアンテック社は、日本の裁判所での裁判に応じざるを得なくなります。

 では、ナイアンテック社が、仲裁合意の主張を行った場合はどうでしょうか。

 この点については、仲裁法附則第3条2項に、「消費者は、消費者仲裁合意を解除することができる。」とありますので、仮に、ナイアンテック社が、仲裁合意の主張を行ったしても、合意を解除すると主張すれば、ナイアンテック社の仲裁合意の主張は認められないことになります。

 いずれにしても、仮にナイアンテック社が、日本で裁判を起こすことはできないと主張しても、そのような主張が認められるとはまず考えられません。

 では、ナイアンテック社が、日本の裁判所で裁判を行うにしても、準拠法(判断の基となる法律)はカリフォルニア法であると主張した場合は、どうでしょうか。

 法の適用に関する通則法第7条には、当事者が準拠法を選択することができる旨の規定がありますが、第11条に消費者契約の特例が設けられておりますので、仮に合意があったとしても、日本の消費者が日本法における特定の強行規定を適用すべき旨の意思をナイアンテック社に表示しさえすれば、日本法の強行規定が適用されることになりますので、いずれにしても、ナイアンテック社の主張が認められるとはまず考えられません。

 このように、規約にどのように記載されていたとしても、日本において裁判を行うことはできますし、ナイアンテック社も、日本で裁判が起こされれば、おそらく日本での裁判に応じることにはなるでしょう。

 実際のところ、日本に営業所のないインターネット関連の外国法人の場合も、ナイアンテック社と同様の規約があるのがむしろ一般的ですが、いずれの場合も、日本において裁判上の手続が取られていますし、仮処分命令が発令されたり、判決が出されたりもしています。

 何も、規約の点については、今回の「ポケモンGO」特有の問題というわけではありません。

 率直な感想としては、争う方法は色々とあるはずなのに、なぜ、敢えて、相手方の設定した相手方の土俵で、闘わなければならないかのような説明がなされているのか、この記事の解説の仕方は、一般消費者に誤解を与える可能性があると言わざるを得ません。

この記事は弁護士・スタッフの個人的な意見や見解であり、当弁護士法人を代表するものではありません。

        

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