裁判手続のIT化


IT化の内容

弁護士の最所です。現在、裁判手続きのIT化が進んでいます。

IT化とはいっても、大層なことをしている訳ではなく、ビデオ会議システムを使って裁判手続きを行ったり、裁判所への提出書面をデータの形でアップロードしたりといった、程度のものです。

ようするに、普通の会社で普通に行われていることを、裁判所もようやくやり出した、実態としてはそんな感じのものです。

IT化に対する反対の声

とはいえ、もともと、裁判官や弁護士は、「文系人間」の最たるもので、かつ、超保守的。そのような人達にとっては、これだけでも大変革。

導入が決まってからも、反対の声は数知れず。

IT化のメリット

ただ、一旦導入が始まると、これまた、適応できる人達はすぐに適応していきます。とくに、若手の裁判官などは、普通に使いこなしていますし、裁判官の方から、弁護士に対して、○○のようにしてくださいと、使い方についての「指導」が入ったりもしています。

弁護士の方も、ビデオ会議で裁判手続きに参加することができるようになってから、裁判所に行かなくて良くなりましたので、体力的にも、非常に楽になりましたし、スケジュール調整も容易になりました。また、小さいお子さんがいる弁護士も、時間になったら、自宅からビデオ会議で裁判手続きに参加できるなど、どちらかというと、弁護士側のメリットの方が大きいのではないかと思います。

私も、既に2年半ほど、ビデオ会議システムでの裁判手続きを利用していますが、今、突然、ビデオ会議での裁判手続きができなくなって、従来通り、裁判所への出頭を求められると、直ちに、業務が破綻すると思います。それくらい、ビデオ会議は、なくてはならないものになってしまいました。

今後、IT化の範囲が徐々に拡大していって、最終的には、現在、印紙を貼って提出している訴状や、郵便での送達がなされている判決書も、オンラインでの送受信ができるようになる予定です。

IT化されても

 裁判手続きがIT化されると、弁護士の業務は効率化し、従前と比べて、大分楽になりました。その意味では、IT化は大歓迎なのですが、裁判手続きには、簡略化すべきではなないと思う手続きもあります。

 例えば、破産手続。

 破産手続きは、返済が不可能となった場合に、その人の持っている資産をすべて換価して、債権者に対して債権額に応じて平等に分配した上で、最終的には、その人を免責する(借金を棒引きする)手続きです。

 債権者からすれば、自らには何らの責任がないにも拘わらず、貸したお金が返ってこなくなります。債権者の犠牲の下に、返済が不能となった債務者の経済的再生を図る、それが破産手続きです。

 借金を棒引きにする以上は、債務者にも、それなりの負担がないといけないと思っています。その意味では、債権者集会の日くらいは、きちんと裁判所に出頭して、裁判官からの質問に答え、債権者とも対峙すべきだと思います。

 業務の効率化と手続きの適正化の両面から、使い勝手の良い裁判制度となるためには、どのようにすべきか、この点については、裁判官も弁護士も、常に考えていかなければならない問題です。