外国法人の登記義務


 弁護士の最所です。

 「政府、海外IT大手に登記要請 訴訟手続き円滑化」(時事通信)

 政府のこの登記要請には、極めて重要な意義があります。

 グーグル、Twitter、Meta(旧フェイスブック)、これらの会社ついて全く知らないという方はほとんどいらっしゃらないと思います。

 また、例えば、グーグルが提供する検索サービスや、ストリートビュー、グーグルマップ、これらのサービスを利用したことがないという方のほうが、むしろ少ないのではないでしょうか。

 では、これらの会社が提供するサービスによって何らかの被害を受けた場合、例えば、Twitter上で自らのプライバシーが侵害されたとして、その削除をTwitterに対して求めようとする場合、どこの誰に対して、裁判を起こせば良いのでしょうか。

 日本には、「Twitter Japan 株式会社」という会社があります。

 「Twitter Japan 株式会社」は、Twitter社の日本法人だとして、裁判を起こして責任の追及ができるでしょうか。

 答えは、「NO」です。

 「Twitter Japan 株式会社」は、インターネットサービスである「Twitter」を運営してはいないので、「Twitter」から損害が生じたというのであれば、直接、運営者である「Twitter, Inc.」に言って欲しい。自らは、無関係である。

 これが、彼らの言い分です。 

 普通の人が聞いたら、「はぁ????」となると思います。でも、これが真実です。

 結局、カリフォルニア州にある「Twitter, Inc.」に対して、裁判を起こさなければなりません。

 「Twitter, Inc.」に裁判を起こせるのであれば、別に良いのではないか。

 そのように思われるかも知れません。ところが、外国の法人に対して裁判を起こすことは非常に大変です。具体的に説明致します。

 大変なことその1ー資格証明書の取得が大変

 「Twitter, Inc.」がどこにあって、その代表者が誰かについて、公的機関から3ヶ月以内に発行された書面で証明しなければなりません。

 日本の会社の場合、法務局に行って、該当会社の現在事項証明書を取得すれば良いので、概ね1000円程度で、簡単に誰でも取得できます。

 ところが、外国法人の場合、その書類を日本国内で直接取得することはできません。インターネット上で取得できるケースもありますが、その場合でも、外国から日本に送って貰う必要があります。

 取得するだけでも大変です。

 大変なことその2ー翻訳が大変

 では、手に入れた書類をそのまま裁判所に提出すれば良いのでしょうか。答えは、「NO」です。取得した書面を、日本語に翻訳しなければなりません。

 逆に、訴状や証拠は、日本語で作成して日本の裁判所に提出しますが、相手方が外国法人の場合、それらの書面を英語に翻訳しなければなりません。

 大変なことその3ー裁判が始まるまでが大変

  裁判を起こす場合、訴状や証拠等の裁判資料を、相手方の所在地に対して「送達」するという手続が必要になります。外国法人を相手にする場合、この「送達」に非常に時間がかかります。

  細かな点は省略しますが、訴状を裁判所に提出してから、裁判が始まるまでに、早くて半年、場合によっては、1年近くかかります。

 ここまでやって、ようやく、裁判が始まります。

 それで、裁判が始まったとして、その後、どうなるかというと、日本の最大手の法律事務所に所属する弁護士が、代理人として裁判を行います。それも、大抵、ほぼ同じ事務所のほぼ同じ弁護士のチームが担当します。

 どうせ、特定の事務所の特定の弁護士が対応するのであれば、始めから、その事務所に送達できるようにすれば良いじゃないか、これが本音です(※日本の弁護士が担当するのであれば、そもそも、翻訳などは、全く無意味な作業です。)。

 なぜ、このようなことが必要とされるのでしょうか。それは、グーグル、Twitter、Meta(旧フェイスブック)等の外国会社が日本における代表者を定めて登記をしていないからです。

 外国会社について、会社法817条は、次のように規定しています。

「第817条 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち1人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

2 外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

3 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

4 外国会社は、その日本における代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」

 この条文をみれば明らかですが、日本において取引を継続しようとする外国会社は、日本国内に住所を有する代表者を定めなければなりません。そして、本来、日本での業務に関して、裁判を起こす場合には、この代表者の住所地を送達場所とすることが予定されています。

 さらに、会社法933条、934条は、外国会社の登記を義務づけています。

 ようするに、本来、グーグル、Twitter、Meta(旧フェイスブック)が、日本における代表者を定めることなく、登記もしていないという状態は、完全な「違法状態」であったわけです。

 世界的大企業が「違法状態」を放置した結果、その不利益を誰が被っていたのかというと、それは、圧倒的多数の日本の消費者です。

 日弁連も、令和2年12月18日に意見書を提出しています。

  この問題については、私も、散々色々なところで文句を言ってきたのですが、ここにきてようやく、ホントにようやく、政府が登記要請を始めたようです。

 「違法状態」を是正しようともせず、よくもまぁ、ここまで放置してきたなぁというのが、本音ですが、ようやく、政府も動いてくれたので、現状の「違法状態」が速やかに是正されることを希望しています。