弁護士の最所です。
先日、ホームレスの方の弁護事件を担当いたしました。詳しい事情を書くことはできませんが、高齢のホームレスの男性が、スーパーで食料品の万引きをしたという事案でした。万引きは窃盗罪(刑法235条)に該当する行為ですし、最高刑で懲役10年の刑が定められている犯罪でもありますので、犯罪を行ったこと自体は、厳しく糾弾されるべきであると考えております。しかし、その方の境遇を聞いてみると、果たして、その責任の全てを押し付けてもよいものかと思わなくもありません。一般の方は、身寄りもなく食べるものがなければ、生活保護でも受ければいいのではとお思いになるかもしれません。しかし、現実には、ホームレスの生活保護申請を行政機関が受け付けてくれないのが実情です。それは、住居がないと生活実態を調査できないという理由らしいのです。もちろん、住居があることが生活保護申請の要件ではありませんし、通達でも、ホームレスの生活保護を住居がないことを理由として拒絶してはならないと明確に書かれております。しかし、現実は全く異なります。私が、生活保護課の担当者に事情を聴いた時にも、「住民票のあるところの方が手続きがスムーズに行く」「住民票はどこにあるのか」と言った質問が繰り返しなされるなど、その対応からは、ホームレスの生活保護に関し、あまり関わりたくないという印象を受けたのは事実です。
しかも、私とのやり取りの中でも、担当の方は、生活保護に関する原則論を言うだけで、ホームレスの一時保護の方法について説明はしていただきましたが、生活保護を申請する方法に関する具体的なことは一切お話いただけませんでした。ただ、ご本人がいらっしゃれば、きちんと対応するという回答にとどまっていました。そのやり取りからは、できる限り関わりたくないという本音が見え隠れしていて、本当に困っている人に生活保護がなされていない現状を目の当たりにして、これでいいのだろうかと思い悩んでいるところです。