(事例・相続)ひどい仕打ちをした兄に相続させたくない


【事例】
父は既に死亡しており、75歳の母がいます。子供は、長女(姉)・長男(兄)・次女(私)の3人です。母は、兄からひどい仕打ちを受けたため、遺産を全く相続させたくない、と言っています。母は、兄には全く遺さない遺言書を作成するようなのですが、遺留分は渡さざるをえないのでしょうか。遺産を兄に全く渡さない方法はあるのでしょうか。

【回答】
お母様の遺言書通り、お兄様以外のお二人で遺産を相続することとなった場合、お兄様はお二人に遺留分減殺請求できるのが原則となります。ただし、お兄様のお母様に対する『ひどいしうち』というものが、虐待や重大な侮辱等の非行に該当すれば、お母様は、生前に、家庭裁判所に対し、『推定相続人の排除(相続資格のはく奪)』を請求することができます(民法892条)。または、遺言で排除の意思を表示しておけば、相続開始後、家庭裁判所で手続きを取ることになります(民法893条)。

推定相続人の排除とは

推定相続人(相続開始後に相続人となる予定の人)に『排除事由』があった場合,被相続人は,この推定相続人の相続資格をはく奪することができます。これを『推定相続人の廃除』といいます。

この推定相続人の廃除が認められるのは、下記の『排除事由』がある場合に限られます。

  • 被相続人に対し虐待をした場合
  • 被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
  • その他の著しい非行があった場合

もっとも、『推定相続人の廃除』は、推定相続人から相続資格のすべてをはく奪する制度です。相続分を減少させるようなことは遺言によってもできますが,この廃除は,それにとどまらず,法が法定相続人の最低限度の権利として保障している遺留分まではく奪する強力な効果を持つ制度です。したがって,その運用も非常に厳格です。

最低限度の権利まで奪う制度であることから、裁判所も適用には非常に慎重で、実際には、犯罪やそれに準ずるほどに悪質な場合でなければ,廃除事由として認めないという運用になっています。

手続きには、費用と労力が相当かかります。お早目に見通しなどを弁護士に相談されることをお勧めします。

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