不思議な広告


債務整理というキーワードで検索すると、相当多くの法律事務所、司法書士事務所がヒット致します。私どもの事務所も広告を行っておりますし、広告を行うこと自体は、一般のお客様にとって、法律事務所が身近な存在になるきっかけとなるものですから、否定されるべきものではないと思っております。ただ、旧来の弁護士の中には、広告を行うこと自体が品位を害すると考えている方が数多くいるというのも事実ではありますが・・・。

とはいえ、広告の中身を見てみると、正直「んっ?」と思うのもあります。たとえば、「解決件数○○千件」だとか、「過払い金は全て満額回収」だとか書かれているのを見ると、「???」と思ってしまいます。と言いますのも、過払い金返還に関する判例が出て、急激に返還請求が増えたのは、ここ、5,6年のことです。仮に、5000件の過払い金返還請求を処理したとすると、年にして、平均で800件から1000件近くの事件を処理したことになります。その数を在籍している弁護士数で割ると、一人あたりの処理件数が出ることになりますが、仮に5人だとして、一人あたり160件から200件、休日を入れて考えると、ほぼ1日から2日で1件の事件を処理している計算になります。

事件処理には、弁護士が、面接して契約をする必要がありますし、和解条件の検討、訴状の作成等を始め、法廷にも行く必要があります。確かに、過払い金返還請求事件だけを取り扱うのであれば、1日から2日で1件の事件処理も不可能ではありませんが、通常は、相談に来られるお客様の多くは、多重債務の状態ですから、むしろ、破産や民事再生手続も平行して行う必要があります。

そうなると、過払い金請求以外の件数は、任意整理も含めれば「解決件数○○千件」よりも遙かに多いことになります。過払い金返還請求よりも、破産や民事再生手続の方が、遙かに労力がかかることからすると、その処理速度はまさに超人的と言えます。また、「全て満額回収」というのも、まさに超人的です。「満額回収」をするためには、業者と和解はできませんから、すべて判決をもらって勝訴する必要があります(そもそも、「和解」とはお互いに妥協することが前提ですので、「和解」で満額というのは概念上あり得ません。)。しかも、判決内容によっては、貸金業者は控訴してきますので、控訴審まで徹底的に争って、かつ、控訴審でも勝訴しなければなりません。そのような対応のできる弁護士は、超人だと思います。