アマゾン 運営は日本法人


 弁護士の最所です。

 アマゾンが、自社の日本語サイトを運営しているのが、日本法人「アマゾンジャパン」であることを認めたとの報道がなされました(毎日新聞社)。

 本拠地が日本国外にある企業の場合、日本国内に日本法人をおいていたとしても、日本法人には、権限がないとの主張がなされるケースが多くあります。

 この場合、権限がないとの主張がなされ、当事者適格が争われると、いわゆる本国法人と日本法人との間で、どのような権限分配がなされているかは、外部からは容易に窺い知ることができませんので、結果的に却下判決がなされてしまうケースが多くありました。

 また、特に、IPアドレス、タイムスタンプの仮開示を求める仮処分命令の申立の場合、早期に情報が開示されないと、ログの保存期間を途過してしまい、発信者の特定に至ることが出来なくなってしまいます。そのため、争点を減らすという意味でも、当初より本国法人を被告として、裁判上の手続をとるのが通常でした。

 仮に、本国法人を被告とする場合、一般的には、外国会社の資格証明書(登記事項証明書)をどのように取得するかという点が現実的な問題となります。

 国によっては、国外への郵送をしてくれたりする所もありますが、国外への郵送を行わない所(フィリピン等)や公的証明に電子情報を用いる制度を採用している所(米国ネバダ州等)もあり、また、そのような所では、紙媒体での証明書の提供がなされない場合もありますので、インターネットの問題に精通した弁護士でないと、現実的には、対応が困難でした。

(このあたりの事情については、近時発刊されました「発信者情報開示請求の手引き」(株式会社民事法研究会発行)41頁~43頁に、弁護士法人戸田総合法律事務所の中澤佑一先生が書かれておられます。)

 今回は、アマゾンが通販サイトの性質上、ユーザー情報を保有していることがある程度予想されたので、ログの保存期間の点を気にする必要がなかったことも、日本法人を相手とした一つの理由ではないかと思います(今回、訴訟を担当された山岡先生はインターネットの問題に精通された先生ですので、あえて、日本法人を相手にされた、または、本国法人と日本法人の双方を被告としたのではないかと推察致します。)。

 今回、アマゾンが日本語サイトを運営しているのは日本法人「アマゾンジャパン」と認めたということですので、今後は、購入者が投稿した商品評価(レビュー)の内容に関するものであれば、日本法人を被告とした形で、裁判上の手続を取ることが可能となるものと思われます。

 アマゾンが、日本語サイトを日本法人が運営していることを認めた理由は定かではありませんが、ひょっとしたら、アマゾン自身、誹謗中傷行為を放置することによって、自社サイトへの出品者が減ることを怖れたのかもしれません。

 アマゾンとしては、安易に情報を開示すれば、責任を追及される可能性が生じるでしょうし、かといって放置すれば、出品者が減ってします。そのジレンマの中で、逆に、裁判所に判断して欲しいと考えた可能性もあるのではないでしょうか。

 サイト運営者が、対応に苦慮することがないよう、裁判外での発信者情報の開示に関する明確なルール作りが必要ではないかと思っています。