免責許可決定の効果


「破産すれば借金がチャラになる」と言われますが、この借金(=債務)が「チャラ」になる制度が、免責許可決定という制度です。
では、「チャラ」になるとは、どのような状態になることを指すのでしょうか。
一般的には、「チャラ」とは、債務が消えてしまった状態をイメージすると思います。しかし、判例・通説はこのように考えていません。
判例・通説は、免責許可決定によって債務履行の「責任」は消滅するが、「債務」自体は残ると考えているのです。
すなわち、免責許可決定後の債務は、債権者が裁判上で請求することはできないが、債務者が任意に履行をすれば、その利益を享受することができ、利益を返還する必要がないという性質を持った債務となります(このような債務を「自然債務」とよんでいます)
判例・通説がこのように考える根拠は、免責許可決定後、債務者が真の意思に基づいて履行し、その履行が社会通念上も是認しうる場合には、その弁済を無効とする必要はないという点にあります。
この考え方を聞いて当然出てくる反論は、債権者がこの考えを盾に、債務者に取り立てを継続する危険があり、破産を選択した債務者の経済的再起を害するのではないかというものです。
このような反論を根拠とし、免責許可決定の効果は、名実ともに債務の消滅であると考える有力説があります。
一般的な「チャラ」の感覚は、この有力説に近いものであると思われます。
私見ですが、自然債務であるとはいえ債務が残ると考え方は、特に借入先が闇金等悪徳債権者であった債務者は、破産後もその者からの取立に苦しめられ、免責されたはずの債務の弁済のために、新たに悪徳債権者から借り入れをしてしまう等、破産・免責制度を骨抜きにしてしまいかねない危険を孕んでいるため、やはり免責の効果は端的に債務の消滅とすべきではないか考えます。
ただ、有力説に立った場合、理論上、債務者が免責許可決定後、真の意思に基づいて履行をしたいと考えても、債務が消滅してしまっているため、「履行」をすることはできず、また、債務者が任意に債務相当額を弁済した後に、やはり気が変わったから返せと言い出した場合、債権者は不当利得として、返還請求に応じなければならないこととなります。