以前、名ばかり管理職について記載した際に、労働者には残業代請求の権利があると記載しました。では、そもそも残業とは何で、残業した場合どの程度の残業代を請求できるのでしょうか。
まず、労働者を何時間労働させ、その労働時間をオーバーした場合にいくらの残業代を支払うかは労使間の契約で決めることができます。もっとも、労働者の最低限の権利を保障する法律として労働基準法があり、使用者が同法より低い契約内容を労働者に押し付けることはできません。 そして労働基準法に定められている労働時間は1日8時間、1週間40時間以内です(法定労働時間)。そして法定労働時間をオーバーする労働時間が法外残業時間ということになり、法律上割増賃金での残業代請求権が発生します。 なお、労使間の契約で法定労働時間より短い労働時間とすることは可能です(所定労働時間)。所定労働時間を超えるが法定労働時間を超えない部分は法内残業時間ということになり、法律上当然には割増賃金での請求権は発生しません(労使間の契約で法内残業時間にも割増賃金を支払うこととなっている場合には割増賃金での残業代請求が可能)。
次に、割増賃金として何パーセント上乗せして請求できるかも労使間の契約によることになりますが、労働基準法は25%以上の割増賃金を支払わなければならないことを規定しています(すなわち最低限25%アップで請求できることが保障されています)。
以上を踏まえ、1ヶ月20日出勤、労働総時間200時間、月給(基礎給)20万円のAさんがいくらの残業代を請求できるかを計算してみましょう(労使間で労働基準法での条件より有利な条件で契約していないことが前提)。
まず、Aさんの法外残業時間は200時間-(8時間×20日)=40時間です。 次に、Aさんの基礎給から、Aさんの時間当たりの給与を計算します。すなわち20万円÷1か月の法定労働時間(8時間×20日)=1250円です。 法外残業については25%上乗せした割増賃金を支払わなければなりませんので、Aさんの法外残業時間の時間給は1250円×1.25≒1562円です。 以上よりAさんの1ヶ月の残業代は1562×40=6万2480円となります。
なお、実際には上記以外にも、法定内外の休日出勤、深夜労働、変形労働時間制及び一定の条件を満たす場合のさらなる割増等、事情により残業代の計算方法が変わってきます。
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