弁護士の最所です。
「私人逮捕」系ユーチューバーの男性が逮捕されたとの報道がなされています。
刑事訴訟法213条は、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と規定しています。「何人でも」とあることから、「私人」でも、現行犯逮捕ができる、条文の解釈としては、確かに、そのようになります。
ただし、あくまでも、「現行犯人」が対象ですので、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」(刑事訴訟法212条1項)でなければなりません。「現行犯人」にあたらない場合には、そもそも、逮捕自体が違法となります。
刑法220条は、「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。」と規定していますので、「私人」が「現行犯人」にあたらないにも拘わらず、逮捕した場合には、逮捕・監禁罪(刑法220条)が成立します。
逮捕・監禁罪(刑法220条)は、「3月以上7年以下の懲役」ですので、かなり重い犯罪です。
また、「私人」が「現行犯人」を逮捕した場合には、「直ちに」「検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない」(刑事訴訟法214条)とされていますので、逮捕後に、直ちに警察官を呼んで、身柄を引き渡さなければなりません。「逮捕」が認められるとしても、警察官に引き渡すまでの、その間、それが正当化されるに過ぎません。
あくまでも、「私人」による「逮捕」が正当化されるのは、現行犯人がその場から逃走することを防止するために必要な最小限度の範囲に限られます。当然のことですが、怪我をさせるような暴行を加えることが、当然に正当化されるものではありません。
今回のケースでは、逮捕の様子をインターネット上で公開することを目的として行っていたようです。仮に、「私人」による「逮捕」が正当化される場合であったとしても、それをインターネット上に広く公開することが許されるかというと、それはまた別の問題です。
公益目的とは言い難いような態様での公開がなされた場合、いかに犯罪の現場を撮影したものであったとしても、名誉毀損罪(刑法230条1項)が成立してしまいます。
「私人」による「逮捕」は、緊急性が認められる場合に例外として認められるものであって、「私人」「逮捕」を口実とした「晒し行為」を、正当な行為であるとは、やはり、認めることはできません。