行政書士によるアダルトサイトとの解約「交渉」!?


弁護士の最所です。

 昨今、一部の行政書士によるアダルトサイトとの解約交渉というのが話題となっています。

アダルトサイトのワンクリック詐欺の問題は、変な話ですがすっかり「定番」となっていて、私も3年前にブログで書いたことがあります。

 最近では、こうしたワンクリック詐欺に関するお問い合わせは、かなり落ち着いてきた印象ですが、お問い合わせを受けた場合には、契約もしていないアダルトサイトからの不正請求については、放置するのが一番ですので、放置するようにアドバイスさせて頂いています。

 ところが上記のサイトなどでも報道されているとおり、一部の行政書士がこうしたアダルトサイト業者に対する解約交渉を行っているようです。

 では、行政書士がアダルトサイト業者に対する解約交渉を行うのはなぜ問題なのでしょうか。

 ひとつは業務範囲の問題です。行政書士にできることは、下記の大阪弁護士会のサイトにもありますが、「当事者間に全く争いがない事件において,文書の作成を代理し,また作成した文書を提出することの代理」に限られています。

 つまり、今回のように、行政書士が依頼者の代理人として業者と交渉をすることは、行政書士の業務範囲を超えるもので、法律上できないのです。(法律上できないのに、なぜ、行政書士がこうした業務を行っているのかについては別の機会に。)

日本行政書士会連合会(日行連)も会長談話を発表しています。

 もうひとつは、事案への対処方法です。本来であれば、契約もしていないアダルトサイトからの不正請求については、放置するのが一番です。しかし、前述のように、一部の行政書士が、インターネット上で「アダルトサイトとのトラブル解決」をうたって、顧客を獲得し、しかも行政書士の資格では法律上やってはいけないことを行った結果、トラブルは解決せず、依頼者は費用を請求され、アダルトサイトとのトラブルどころか、行政書士との消費者トラブルになるという由々しき事態を招いています。

 また、私は弁護士として、インターネットに関する法律相談をよくお受けしますが、アダルトサイトのワンクリック詐欺の被害以外にも、インターネット上の掲示板への投稿の削除について、行政書士によるトラブルの事案を目にすることがあります。

 インターネット上の掲示板の削除は、掲示板の運営者が独自の判断によって行います。権利を侵害されたと主張する人からの申請があれば、原則として削除する掲示板もあれば、相応の理由と根拠を示さない限り、削除しない掲示板もあります。中には、裁判所に対して仮処分命令を申し立てた上で、裁判所の決定が出ない限り、削除に応じない掲示板もあります。

 トラブルになった事案は、依頼を受けた行政書士が、裁判所の仮処分手続きを経なければ削除に応じない掲示板に、裁判所の決定なしで削除申請をしてしまったため、掲示板の投稿が削除されなかっただけではなく、不特定多数の匿名閲覧者から依頼者の情報を拡散されたり、ネット上で叩かれたりして「炎上」してしまった、というものでした。

 日行連には、こうした「違法」行為を行う一部の行政書士に対する指導を徹底して頂くとともに、私たち弁護士も、消費者の方々にもっと気軽にご相談頂けるよう、日々の情報発信を積極的にしていかなくてはならないと強く感じています。