労働審判の解決事例1


弁護士の余郷です。

今回は私の労働審判の解決事例をご紹介します。

(但し、守秘義務の観点から事案の内容と解決内容についてアレンジしていることがあります)

(事案の概要)

人材紹介会社を通して、製造業の企業から採用内定を受けた30代の依頼者が、勤務開始日を一方的に延期され、約1か月後に、前職の内容を理由に突然採用内定取消通告を受けました。

相談者はこの会社での勤務を諦め、他の会社に就職をしてしばらく就業していましたが、合理的理由のない採用内定取消にやはり納得できず、不法行為に基づき損害賠償を求め労働審判の申立てを行いました。

(解決内容)

労働審判委員会は、前職の内容は分かった上で採用しており、採用内定取消の経緯に問題があると判断し、賃金4か月分相当額の解決金を依頼者が得ることで解決しました。

採用内定は始期付解約権留保付労働契約であり、この解約権は、雇用開始後の解雇の場合より広く認められるとはいえ、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる」場合に限られます。

解雇や解約権の行使が無効であることと損害賠償が認められるかは別の問題ではあるのですが、本件は労働審判手続きを利用したことによって迅速な解決が図れた事例だと言えると思います。