日々研鑽


弁護士なら六法の条文をすべて暗記しているんですか?と聞かれることがたまにあります。少なくとも私は超人的な記憶力を持ち合わせていないので、六法の条文をすべて暗記しているということはありません。なお、六法の一つである民法だけでも1044条、条文があります。 六法とは、憲法、民法、商法(会社法)、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法のことを指します。弁護士になるための司法試験では、六法、行政法及び選択科目(労働法、倒産法、租税法、経済法、知的財産権法、環境法、国際私法及び国際公法の8分野の中から1つを選択して受験します)の知識が求められます(その他、民事執行法等の周辺法規の知識も必要となる問題が出題されることもあります)。 一方、平成24年1月1日現在で、日本には1868もの法律(憲法含む)が存在します(総務省行政管理局が整備している法令データより)。これに加えて、規則、政令、通達、裁判例など(以下、すべてまとめて「各種ルール」といいます。)もすべて含めると大変な数になります。 弁護士業務を行っていると、見たことのない各種ルールが問題となるケースに直面することがあります。その場合は、限られた時間で各種ルールを一通り把握しなければなりません。また、実は問題となりうる各種ルールが存在するのに、それを見落として事件を進めてしまうことのないように各種ルールが意識に引っかかる程度に網を張っておかなければなりません。 さらに、企業法務を扱うとなると、会計知識や刻々と変わる経済情勢の知識も備えておく必要があります。 司法試験で問われる法律の素養を身につけることは極めて重要ですが、弁護士の真の勉強は、弁護士業務を開始してから始まるといっていいと思います。日々研鑽が必要です。 弁護士 池田雄一郎