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刑事告訴という手段


 鳥越氏が週刊文春に続いて、新潮社に対する刑事告訴を行っています。  この件については、様々な方がコメントされていますが、政治的信条とは離れて、この問題について考えてみたいと思います。

 前回のブログで、「憲法上、政治活動の自由、表現の自由は、民主制において非常に重要な権利として保障されています。」と説明させていただきました。

 また、なぜ、表現の自由が重要なのか、この点についても、ブログで書かせていただきました。

 その中でも記載しているとおり、「主権者である国民が主権者でありうる為にも、正当な批判を自由に行うことができる場は、守られなければな」らない、これが、最も重要なことだと考えています。

 当然、批判の中には、「正当」でない批判(内容が虚偽、単なる侮辱的表現)もあるでしょう。そして、これらの表現が許されないことは当然です。

 しかしながら、「許されない表現」か否かを、いかなる立場のものが判断すべきか、この問題については別途考える必要があります。

 時の為政者が判断し、「許されない表現」を行った者に対して、刑事上の手続を課す、このようなことがまかり通れば、為政者の政策の問題点を浮き彫りにすることはできません。

 また、実際にも、為政者が判断すべきだという人はいないでしょうし、ましてや、マスコミの方々が、そのような主張をすることなどはあり得ないでしょう。

 では、誰が判断すべきか、それは、政治的な影響を受けることがないよう制度的にも保障された裁判所が判断するのが、最も公平に資するはずです。

 もっとも、裁判所の判断は、厳格であるが故に、結論が出るまでには、相当の時間を要します。また、迅速な判断が可能な仮処分手続であったとしても、出版物が発行されるまでに判断が間に合わない可能性もあります。

 そのときに、どうするか。確かに、今回のように限られた選挙期間の中では、裁判上の手続をとることは現実的でないのかもしれません。

 しかし、だからといって、いきなり、刑事上の処罰を求める意思表示をすることが妥当でしょうか。

 捜査機関に判断を委ねるというのは、捜査機関を束ねる権力の側に判断を求めていることに他なりません。

 候補者は、今後、まさに「為政者」になろうとする者です。

 「為政者」になろうとする者が、時の「為政者」に対して、「許されない表現」かどうかの判断を求めようとしているのですから、それ自体、自己矛盾と言わざるをえません。

 「為政者」に対して判断を求めることを是とする候補者が、仮に「為政者」となった場合、「為政者」の判断として、「許されない表現」を行った者に対して、刑事上の手続を課す、そのような対応をするのではないかと思われてもやむをえないと思います。

 本来、選挙期間中は、お互いの意見を主張し合い、対立候補者の問題点を明らかにし、批判し、有権者に自らの意見を、そして、不当な批判がなされているのであれば、その事実についても、主張し、対立候補者を批判することが予定されています。

 そうであれば、今回のケースでは、出版された出版物の内容が、「虚偽であること」を、証拠ともに明らかにした上で、そのような「虚偽であること」を、漫然と出版する行為は、不当である、敢えて、裁判上の手続が間に合わないこの段階で出版することからしても、背後に様々な事情があるはずだということを、証拠を示して、徹底的に反論することが求められていたはずです。

 しかし、それを正面から問う事なく、「為政者」の判断を求めようとした、そのことは、公職の候補者の対応として、極めて疑問があると言わざるを得ません。

 私としては、刑事告訴をしただけで終わらせていただきたくはありません。

 選挙の結果がどうであれ、やはり、民事訴訟を提起していただきたい、その中で、裁判所の判断を求めていただきたい、そうでないと、真相は明らかにならないと思います。

 そして、仮に、虚偽であることが明らかとなった場合には、今回記事を掲載した、雑誌社を徹底的に糾弾していただきたい、仮に背後に様々な事情があるのであれば、その点も明らかにしていただきたい、その上で、次の選挙で「為政者」を権力の座から引きずり下ろしていただきたい、それが、「候補者」としての役割ではないでしょうか。

 

この記事は弁護士・スタッフの個人的な意見や見解であり、当弁護士法人を代表するものではありません。

        

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