湘南平塚事務所弁護士の最所です。
先日、東京地裁において、「ネット上の記事削除を業者が請け負う契約は弁護士法に違反する」との判決が出されました。 (原告の訴訟代理人は、弁護士法人戸田総合法律事務所の中澤佑一弁護士です。)
インターネットで検索をすると、真っ先に、検索の上位に係るのが業者の広告です。
業者の広告を見ると、いかにも、ネット上にある自分にとって不利益な内容の投稿を、直ちに「消せる」かのように、書かれたものが多く存在していますが、現実にはそれほど簡単なものではありません。
このことは、日々、インターネット上の誹謗中傷問題に取り組んでいる弁護士にとっては、当たり前のことですが、なかなか、そのことを理解していただけないのが実状です。
誹謗中傷に悩まされている人に対して、「大丈夫です。できます。」と言ってくれる人がいれば、そのことを信じてしまいたくなるのは、ある意味当然だと思います。
しかし、現実には、それほど、簡単ではありません。実際には、裁判外で削除要請をしたとしても、必ずしも、直ちに削除がなされるとは限りません。
もちろん、コピーサイト等では、半ば自動的に削除がなされるところもありますが、そのようなものであれば、敢えて「業者」に依頼する必要もないのではないかと思います。
期待させるだけ期待させて、できません、既に仕事はしていますので、返金できません、このような対応を「業者」が行っていたのだとすれば、やはり、相当問題があると言わざるをえません。
弁護士の業務は、正面から、権利侵害がなされている事実について主張し、相手方に対し、法律上の削除義務があることを明らかにしていきます。
そして、その点について、相手方が争うのであれば、裁判上の手続きを取っていく、弁護士は、そういった「迂遠な」手続きを、法律に則って、行っています。
削除依頼は、今回裁判所が判断したように「法律事務」に該当します。「法律事務」に該当する以上、弁護士以外の者が、報酬を得る目的で業として行えば、弁護士法72条に違反することになります。
誰もが、早くそして確実に、目の前の困難から抜け出したい、そう思うのは当然です。
しかしながら、そのような人の願いに付け込み、結局はできずに、終わってしまう、そのようなことが行われていたとすれば、やはり、見過ごすことはできません。
弁護士が、正攻法でやってできないことを、少なくとも、裁判上の手続きを取り得ない業者が、合法的にできるはずもありません。
その意味でも、今回、裁判所が、「公序良俗に反する」と認定した意義は、非常に大きいといえるでしょう。