(事例・交通事故)交通事故の被害に遭ったとき(2) 通院開始後(治療中)に行うこと


交通事故が発生すると、主に以下の3つのステージに分けることができます。

前回に続き、今回は、ステージ(2) で行うことについて以下述べます。交通事故により身体に怪我を負った場合、大半の方が通院を余儀なくされますが、その際知っておきたい事柄をまとめました。

【速やかに病院で治療を受けましょう】

軽症で痛みがなかったため、事故後すぐには病院へは行かなかったが、後から症状が出てきたという場合があります。事故後すぐではなく、何日か経ってから受診すると、相手方の保険会社から事故とは無関係だと主張をされ、十分な治療費を支払ってもらえない場合があります。軽症の場合でも、事故後は速やかに医師の診療を受けましょう。治療開始日等が原因で、治療費の支払いを拒否された場合は、弁護士に相談することをお勧めします。

また、痛みがあり本当は病院に行きたいけれど、仕事や家事が忙しくて病院に行かず我慢してしまう場合があります。痛みを堪えて我慢しているのですから、本当ならより手厚く賠償してもらいたいくらいなのですが、実際には「病院に行かない=病院へいく程の怪我を負っていない」と評価されてしまい、賠償が受けられなくなってしまいます。正当な倍賞を受けるためには、非常に大変ではありますがお仕事等のご都合を調整していただいて、なるべくしっかりと通院されることをお勧めします。

【通院する病院等について】

病院であれば、原則として治療費は加害者に請求できるのですが、接骨院や鍼灸院等の場合で、医師の指示がなく通院すると、請求が認められないことがあるので、注意が必要です。通院開始前に都度相手方保険会社から承諾を得ておくと安心ですが、認めてくれない場合は弁護士に相談することをお勧めします。     

【治療費は、健康保険を使用した方が良い場合があります】

交通事故による怪我の治療に関しては、健康保険を使わず自由診療で行われるのが原則です。しかし、必要な手続を踏めば健康保険を使うこともでき、以下のような場合には、健康保険を使って治療費を抑えておいた方が有利でしょう。

自分にも過失がある場合

たとえば、過失割合が、7(相手):3(自分)、治療費200万円(健康保険適用時60万円)、慰謝料その他の損害請求額300万円、だったとします。

健康保険を使用せず自由診療で治療を行うと、最後お手元に残る賠償金は、(200万円+300万円)-(200万円+300万円)×3割-200万円=150万円、一方、健康保険を用いて治療費を抑えた場合、(60万円+300万円)-(60万円+300万円)×3割-60万円=192万円 となり、健康保険を用いた方が多く受け取れる、という結果になります。

相手が任意保険に加入していない場合

相手方に資力がないと、法律上の権利はあっても現実問題として賠償金を十分に受けられない場合があります。その時のためにも治療費は抑えておいた方が安心です。     

【打ち切りを打診されたら】

相手方保険会社から、「今月末で、治療費の支払いを打ち切ります」と言われることがあります。被害者としては、まだ痛みがあって病院に通いたいのに、治療費を請求出来ないのでは困ります。ただし、加害者側の保険会社からの治療費の打ち切りは、それによってその後の治療費を請求することが一切出来なくなるということではありません。このような治療の打ち切りはあくまで保険会社の一方的な見解によるものであって、法的な意味はもたないのです。 法的に被害者が加害者に治療費を請求することが出来なくなるのは、(1)完治(治癒)した場合か、(2)症状固定した場合(治療を継続しても症状が改善しなくなる状態) で、(1)や(2)に当たるかどうかは、医学的な判断に拠ります。

まずは保険会社に主治医の見解を訴えるなどして交渉してみることですが、どうしても見解が折り合わなければ、一旦自費で治療を継続し、後々治療の必要性について裁判等で決着をつけることになります。保険会社との交渉がうまくいかない場合や裁判等での決着を検討される際には、是非弁護士に相談することをお勧めします。