弁護士の最所です。
アパートを建てれば相続税対策になる!?
相続税対策として、アパートの建築を持ち掛けられることが多くあります。
相続税対策という場合、どのようにすれば、相続財産の価値が低く評価されるようになるか、そのような視点で考える必要があります。
まず、土地の評価に関しては、更地の状態が最も価値があるものとして評価されます。
また、建物の評価は、土地の評価と比較すれば、相対的に低く、建物に価値があると言っても、その多くは、利用権(借地権等)の価値というのが実際のところです。
また、預貯金(現金も含む)は、価値そのものですから、その価値の評価を減らすということはできません。
そのため、相続財産の価値を低く評価するために、預貯金(現金を含む)を、建物に「変える」という方法が一般的に行われています。
具体的には、更地に建物が建つことによって、土地の評価は下がります。また、預貯金(現金を含む)のままで相続するよりも、預貯金(現金を含む)を、建物を建築する為の費用として使用して、その不足分については、借入という形での負債とした方が、相続財産全体の評価を下げることができます。
その意味では、アパートを建てれば相続税対策になるというのは、あながち間違ってはいません(もっとも、私は、税務の専門家ではないので、断定はできませんが・・・。)。
ところが、一般的に有利と考えられているアパート建築について、最近、トラブルが急増しています。
問題となっているのが、業者による一括借り上げ、いわゆるサブリース契約の問題です。
NHKのクローズアップ現代でも取り上げられています。
アパート建築が止まらない – NHK クローズアップ現代
私も、実際に、相談を受けたことがあるのですが、相談者の方は、家賃が下げられることがあるとは、全く知らなかった、ローンの返済額よりも、家賃収入が下回る可能性があるとは、全く想定すらしていなかった、と話していました。
「安定したアパート収入を」とか「空室保証」などと言われれば、空室があっても、安定的な家賃収入が見込めると思うのが通常でしょう。
実際に、「空室があっても家賃は保証します。」と言われて、家賃は保証するけれども、家賃自体が下がるかもしれないと、思う人はいないんじゃないでしょうか。
確かに、契約書に署名・押印がある場合には、原則として、その内容について合意したものと判断されます。そのため、業者も強気に出て、適切な説明を行ったなどと主張してきます。
しかし、相続税対策を考える方は、一般的には高齢者の方です。
高齢者が契約主体となる契約であることを考えると、いかに、業者が、契約書に記載がある、きちんと説明したと言っても、裁判所が、業者による適切な説明がなされていなかったと判断する可能性は十分にあると思います。
実際の裁判では、業者が説明に用いた資料、リスクが記載された部分の文字の大きさ、契約対象者の年齢、経歴等の事情を踏まえて判断されることになると思われます。その点では、金融商品の場合と基本的には同じ考え方(リスク説明の有無、対象者の適正等)が使えるはずです。
業者が大きな会社であるとか、裁判をやっても負けないと言っているからといって、そのまま泣き寝入りをする前に、一度、専門家にご相談されてみてはいかかでしょうか。