弁護士の最所です。
司法修習生の卒業試験(正式名称:「考試」、通称:「2回試験」)の結果が、最高裁より発表されました。
この試験は、司法試験に合格した後、司法修習生となった者が、法曹となるために課せられる最終試験のことで、この試験に合格しない限り、法曹資格を取得することはできません。
今回の試験の結果によれば、受験者2015人のうち、42人が不合格になったようです。
合格率からすると、確かに受験者の大半が受かる試験ではありますが、当事者の立場からすると、これほど、辛い試験はありません。
何と言っても、母集団が司法試験に合格した連中ですので、合格率が高いこと自体、何らの慰めにもなりません。
これほど、過酷な試験は、世界中にも類がないのではないかと思います。
試験時間は、7時間30分。途中に休日を挟むものの、これが合計で5日間続きます。
試験時間には、当然昼食の時間も含まれますが、昼食時間中も休憩時間ではなく、食事をしながらのぶっ通しの試験です。
まともに、食事をしている時間もありません。ほとんどの受験生は、おにぎりを2個程度持参して、おにぎりを頬張りながら、試験問題と格闘しています。
試験問題も冊子です。
平たく言うと、試験問題が既に本になっていて、その本に、付箋を貼りながら、ポイントを抑えつつ、答案を書かなければなりません。
答案の枚数も、30枚程度になります。
今思い返しても、2度と受験したくはありません。
とはいえ、実際に資格を取得して、業務を行ってみると、2回試験で問われていたことは、実に基本的な事項だったんだなぁというのが、今となっての率直な感想です。(まさに、喉元すぎればではありますが・・・。)
だからこそ、一定の採点基準が設定できる訳ですし、模範的な解答というものを想定できるのだと思います。
それと比較すれば、実際の事件は、難題です。
正解はありませんし、証拠上も価値判断的にも正解であるべきものを、裁判官が平気で切り捨てることもあります。
その切り捨てる理由も、判決を見てみれば、その筋の方が判決が書きやすかったからねとか、自由心証主義の名の下に、そんな証拠の評価をするのねとか、ほほぉー、そうくるかといった思いをすることも多々あります。
実際の事件では、裁判官の立場に立って、どのような証拠を基に、どのような主張をすれば、こちらに有利な結論について「裁判官が書きやすい判決になるのか」といった、ある種の「戦略」も必要になってきます。
ただ、その「戦略」を試験で問うことは、さすがにできないでしょうけれども・・・。