弁護士の最所です。
「ネット投稿削除へ裁判外手続き 中傷の被害拡大防止、総務省検討」との記事が配信されています。
ADRを活用しようということのようですが、そもそも「公正な第三者」として、どのような人達を想定しているのか、仮に、弁護士だとすると、ネット問題にある程度精通している弁護士は、それほど多くはおりませんので、人選自体、かなり大変なのではないかとも思います。
また、SNSが念頭に置かれているようです。SNSの利用率は、LINE、Twitter、Facebook、Instagramの順ですが、このうち、LINE以外は、すべて海外法人です。
以前、「未登記の海外ITに罰金」のところでも述べましたが、考えないといけないのは、国から言われたとしても、言うことを聞かない企業があるということです。特に外国法人はまさにそうです。
日本企業であれば、政府からの要請や命令を無視するなどということは、考えられません。
しかしながら、外国法人の場合、冷静に、ある意味、ドライに、日本の公的機関の要請に応じた場合のメリット、デメリットを天秤にかけて、無視した場合のサンクションが低く、自らの事業に影響がない、または、応じることに何らメリットがないと判断した場合には、平気で無視します。
今回の件も、総務省が主導しようとしていますが、結局のところ、総務省が民間企業を指導する、お上のいうことを民は聞け、という発想なのではないかと思っています。総務省は、自分たちは誹謗中傷対策を適切に行っているとでもアピールしたいのかも知れませんが、やるべきことはきちんと『使える』制度を作ることです。
総務省は、使えない制度を新たに作るのではなく、現在ある制度の問題点をきちんと整理して、現状の法律や規則に問題があるのであれば(というより実際に問題があるので)、速やかに改善、改正すべきです。
いい加減に、ログは必要以上に保存するな、通信を行う為に必要な情報として「たまたま」持っていた情報であれば、開示しても良かろう、必要な情報があるかどうかについては、開示を求める側が証明せよ、特定ができない可能性がある場合には絶対に開示してはならない、何よりも守るべきは「通信の秘密」である、「通信の秘密」が守られないのであれば被害回復が不可能となってもやむを得ない、こんな考えは止めにしていただきたい。