ネット選挙の解禁について


次回の参議院選挙からインターネットを利用した選挙運動が解禁されることになります。

私の個人的見解としては、選挙運動期間中、ホームページの更新等が一切できなかったということ自体、時代錯誤も甚だしいものだと思っておりました。

ようやく、今回、時代に合致した選挙活動ができるようになったことは、歓迎すべきだと考えています。

ところで、今回の改正では、投稿を行った者に対するプロバイダの意見照会期間が2日間に短縮されています。

選挙運動が短い期間に制限されているなどの事情からすれば、意見照会期間を通常よりも短縮すべきはやむをえないと思います。

しかしながら、意見照会期間内に回答が来なければ問題は生じないかも知れませんが、逆に削除に同意しないとの回答が来た場合、プロバイダ側は当該投稿を削除するか否かについての判断を迫られることになります。

プロバイダ責任制限法では、プロバイダが削除をしなかったとしても、プロバイダが「他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」または「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」でなければ、損害賠償の責任を負わないとされています。

公職の候補者に関わる事実では、その投稿が真実であるか否かが名誉毀損該当性(権利侵害の有無)についての重要な判断要素になりますが、真実性について、プロバイダ側が短期間に判断することは困難です。

削除しなかったことを理由として、プロバイダが事後的に責任を追及されるとすれば、プロバイダとしては、侵害の申告があれば意見照会の結果に拘わらず削除することになるでしょう。

ただ、そうなれば、意見照会制度自体が画餅に帰することになってしまいます。

逆に、何らかの回答があれば、一切削除しないと言うことであれば、選挙活動において誹謗中傷行為を行おうとする人間が通常確信犯的人物であることを考えると、選挙運動道中の誹謗中傷に対する対策としては、無力となりかねません。

結局のところ、匿名情報に対する判断能力を個々人が身につけていくしかないのではないか、そう考えざるをえないというのが私の実感です。

(インターネット上の投稿はごく少数の人間が繰り返し行っていることが多いというのが私の感覚です。同一掲示板上で繰り返し同一の主張がなされることで、あたかもそれが多数意見であるかのように見えてしまう、それがネットの怖さだと思います。私が、発信者を特定したケースでは、同一人又はその関係者が繰り返し投稿を行っていたケースばかりです。本当の多数意見はネット上で繰り返し投稿している人間以外のところにある、それが現実ではないかと思います。)