神戸事務所の弁護士井上です。 先日福岡高裁において、水俣病訴訟の判決が出され、遺族側が逆転勝訴しました。水俣病の認定問題に限らず、国や地方公共団体が行う特定の事項についての認定判断が問題となることは少なくありません(各種許認可の判断、行政サービスの提供の有無etc)。そこで、ここでは、国や地方公共団体が行う認定判断等の当否について検討する際の一般的な判断枠組みについて少しお話したいと思います。 まず、前提として、国等が何かについて認定判断を行う際には、ほぼ必ず一定の「判断基準」に則って判断します(もし一定の判断基準によらずに判断していたとするとそのこと自体、不透明な行政として問題が多いです)。そして、この「判断基準」に、事案ごとに個別の「具体的な事実」をあてはめて結論に至るというプロセスをたどります。 例えば、先の水俣病認定問題を例にとりますと、まず最初に「Aという症状のある人は水俣病であると認め、救済措置を行う」というような「判断基準」を作ります。次に、実際に救済を申請してきたXさんに対して水俣病患者と認めて救済措置を行うか否かについては、XさんにAという症状があるか否かを調査し、「XさんにはAという症状が有る(or無い)」という「具体的な事実」を確定します。そして、あらかじめ定めておいた上記の判断基準にこの具体的な事実をあてはめて「Xさんは、Aという症状が有る(無い)ので、水俣病と認める(認めない)」という結論を出すわけです。 このような判断プロセスをたどりますので、国等の判断の当否を検討する際のポイントについても、このプロセスに沿って検討すればいいわけです。すなわち、まず1つは①そもそも国等が定めた「判断基準」は本当に適切なのか、という点が問題となります。判断に用いる基準が誤っていれば個別の事情を見るまでもなく当然正しい結論に至れるはずがありませんので、まず最初にこの点を検証する必要があります。 次に、いくら判断基準が適切であったとしても、その基準に間違った事実をあてはめてしまっては結論が変わってきてしまいやはり正しい結論は得られませんので、2つ目のポイントとして②当該事案における個別の「具体的な事実」の確定は正確か、ということが問題となります。 上記のような2つのチェックポイントが両方とも適切である場合に初めて国等の認定判断は適切であるということができるのです。 少し長くなってしまいましたが、以上が国等の認定判断の当否を検討する大枠になりますので、もし皆様が国等の行った認定判断に疑問を感じられることがありましたら一度上記2つのポイントに照らして認定判断の当否を検討されてみてはいかがでしょうか。
弁護士 井上 翔太