『離婚』女性にとっての理不尽


 弁護士の最所です。

 『離婚』した場合、女性側は、経済的に非常に苦しい立場に立たされます。特に、幼い子どもを抱えた中で、フルタイムで働くことは非常に難しく、働くにしても、時短勤務とならざるをえません。もともと、男女間に、現実として賃金格差があることに加え、出産、育児で、以前勤務した会社を退職したような場合の再就職は極めて困難です。

 そのため、多くの人は、非正規のパートタイム労働に就かざるを得ないというのが実情です。

 私の感覚として、月の収入は、手取りで12万円~14万円程度。これが、むしろ通常のケースだと思います。このケースで、男性側の収入が年収で400万から500万くらいだとすると、子ども1人のケースで4万から6万円が養育費の金額になります。

 適切に養育費が支払われれば、手取りで16万から18万くらい、児童扶養手当等を含めて、ようやく20万円くらいです。

 これで生活していくこと自体、大変なのですが、一度も養育費を受け取ったことがないという母子家庭が約6割も存在しています。

 そんな状況の中で、有責配偶者の側が、早期に離婚を成立させるために(※有責配偶者からの離婚請求は原則として否定されます。)通常よりも高めの養育費で合意して(※これなら何とかギリギリ生活できるかも知れないと期待して離婚に応じるケースもあります。)離婚を成立させ、その後に、収入の減少を理由に養育費の減額を申し立てるというケースも現実にはあります。

 特に、転職することが前提となっていたような場合に、その事実を秘して、離婚を先行させ、転職による収入の減少を理由に、養育費の減額を申し立てるような場合などは、女性の側は、当初あてにしていた離婚後の生活設計が白紙となってしまいます。

 しかも、まだ、それでも支払われれば良いのですが、支払がなされない場合には、勤務先が明らかであればともかく、自営業者等で、そもそも収入実態がつかめないような場合には、差押を行うことも困難です。

 そういった状況を目の当たりにしていると、『法の実効性』の観点からも、養育費不払に関するペナルティは、早期に導入すべきだというのが、率直な想いです。