湘南平塚事務所弁護士の最所です。
本日、最高裁が検索結果の削除に関して、初めての判断を示しました。
平成28年(許)第45号 投稿記事削除仮処分決定認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 平成29年1月31日 第三小法廷決定
この件については、既に、様々な方がご説明をされておりますので、私は、別の観点から主張させて頂きたいと思います。
まず、今回の許可抗告については、抗告そのものは棄却(理由がないとの判断)されています。
そのため、多くの報道では、最高裁が、検索結果の削除を認めなかったという形で、報道されているのですが、私は、今回の最高裁の判断は、削除が認められる場合についての判断基準を示したものと認識しております。
といいますのも、グーグルは、自らは、インターネット上の情報を収集し機械的に表示しているに過ぎないのであるから、削除義務そのものが存在しない(いわゆる「媒介者論」)、仮に削除義務が認められるとしても、先にサイト管理者に対して削除請求をすべきである(いわゆる「補充性の原則)との主張を行っていました。
ところが、今回の最高裁決定では、上記主張を格別問題視することなく、「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する」と判断し、検索結果を表示することを、検索事業者(本件ではグーグル)の表現行為であると認定し、削除が認められるための考慮要素を示した上で、削除が認められる否かについての判断を行っています。
要するに、今回の最高裁決定は、検索結果の表示そのものを特別なものと捉えている訳ではなく、検索事業者(本件ではグーグル)の表現行為と検索結果に表示される者のプライバシー権を対立利益と捉え、これらの利益について比較衡量して判断することを明確に示したものと理解するのが実態に即するものといえるでしょう。
今回、最高裁の決定が出されたことで、今後は、最高裁が示した考慮要素に即した形で、主張立証を行って行くことで、事例の積み重ねによって、いかなる場合に削除が認められるのか否かについての判断が徐々に明確になっていくものと思われます。
いずれにしても、今回、最高裁が、検索結果の削除を格別特別視することなく、一定の場合には削除が認められることについて、明確に判断したことは、インターネットにおける誹謗中傷に悩む人々にとっては、朗報と言えるのではないでしょうか。