弁護士の最所です。
大学生の就職活動が本格化しているようです。 私ども、弁護士の業界でも、優秀な新人に来てもらいたいと、弁護士会が行う就職説明会等に事務所として参加させてもらったりしています。
司法修習生(※司法試験合格後の研修を受けている方)の方々とお話をさせて頂くと、当時自分が考えていた弁護士像と現実の自分との差を改めて認識させられます。
心のなかで、その感覚大事、うんうん。いやぁー、簡単に言うけどさぁ、結構、大変なのよ・・・etc。
私どもの事務所で一緒に働きたいという方には、是非、来ていただきたいと思っています。
とはいえ、現実には、多くの方々を受け入れるだけの余力が事務所にはありません。
やむなく、選別をしなければなりませんが、その場合、一番始めに確認するのが、いわゆるエントリーシートです。
弁護士会の書式では、経歴(学歴、職歴)、志望動機、自己PR等を記載するのが一般だと思います。
そこで、どのように記載するのが良いのか、弁護士の就職について書かれたものは多くありませんが、基本的には、大学生の就職活動と同じだと思います。
私が、就職説明会で時間があると訴訟の場面に置き換えて、次のように説明しています(※法律関係者向けの説明です。)。
請求の趣旨 私を採用せよ。
請求原因 事務所の求める人材の要件
証拠 自らが事務所の求める人材の要件に該当することを証明する事項
事務所がどのような人材を求めているのか、この点については、事務所のホームページや就職説明会での説明によって、ある程度は分かります。
その事務所が求めている人材に、自らがいかに合致しているのか、その点について、自己PRをしていけば良いわけです。
通常、司法試験の成績やロースクールでの成績を添付することが求められますが、これは、自らが事務所の求める人材に合致していることの「証拠」になります。もちろん、全部の成績が良くなくても構いません。良い成績の科目とを紐付けるだけのストーリーがあれば、十分です。
例えば、企業法務に関わる人材が欲しいと事務所が求めている場合、普通に考えれば、会社法等の民事系の成績が良ければと考えるのが通常でしょう。しかし、それらの成績は、すこぶる悪い。自分の成績を見てみると、民事系よりも刑事系と公法系の成績の方が良いというケース。
そういう場合は、企業経営におけるコンプライアンスの観点、公法上の規制の観点から、自らの志望動機と自己PRを行っていくというのも一つの方法だと思います。
エントリーシートを見ていると、何の目的で相手方がこの書面を求めているのかという視点が欠けていると思われるものも、残念ながらあります。
一例として、志望動機。
事務所の求める人材に自らが合致しているのだというということをアピールする目的で志望動機を書くべきところを、自らの自己実現を図る場として事務所があるというスタンスで記載してしまう。もちろん、本音が後者にあるのは当然で、それは、採用する側としても理解しているのですが、それでは、採用する側が求めていることに対して答えたことにはなりません。
弁護士の業務においては、今、自分が作成している書面が何の目的で、そして、どのような結論を導くために作成しているのか、その書面の意味を常に考える必要があります。
書面を作成するときは孤独ですが、当然、書面には、それを受け取る相手方がいます。
相手方のニーズに応じた書面でなければ、いかに書面の内容が素晴らしくても、それ自体には全く価値がありません。
相手方のニーズに応じて対応する、このことは、まさに、コミュニケーション能力そのものです。
これが、弁護士に最も求められている能力ではないかと考えています。