ある特定の人に対し、誹謗中傷を行う方法として、その他人に成りすます方法は、従来からよく用いられてきました。
例えば、ある特定の女性の名前で、アカウントを作成し、その女性の名前で、わいせつな画像をアップロードしたり、その女性の連絡先等を記載して、不特定の男性との交際を求める内容の記事を投稿したりする等の手法です。
このような場合、当該記事の削除や発信者情報の開示を求める為には、成りすまされた人が、自身があたかも、わいせつ画像をアップロードするような人物である、あるいは、不特定の男性との交際を求める人物であるとの事実が摘示されたとして、社会的評価の低下を理由とした名誉権侵害、または、自らの連絡先が公開されたことを理由としたプライバシー権侵害等を主張して、対応せざるを得ませんでした。
今回、共同通信によれば、大阪地裁が、他人に成りすまされない権利を「アイデンティティー権」として認めたと報道されています。
http://this.kiji.is/113917703223508995
「アイデンティティー権」という概念を、裁判所が正面から裁判所が認めたことによって、今後、「アイデンティティー権」という概念が定着していけば、より直接的に、「アイデンティティー権」侵害を理由とした発信者情報開示請求や削除請求も認められるようになるのではないかと思います。
以前から、原告代理人を務められた中澤佑一弁護士は、この「アイデンティティー権」について主張されておりました。今回の判決は、中澤佑一弁護士が主張する新たな概念が、裁判所によって認められたという意味で、非常に価値があるものだと考えています。
今回、大阪地裁が「アイデンティティー権」という概念を認めてくれたことを機に、今後、成りすましの問題についても、被害の重大性や被害回復の必要性も含めて、建設的な議論ができればと思っております。